妊娠中はお腹が大きくなり、動作も通常時よりも制限されることが多く、さらに出産でも体は大きくダメージをうけます。骨盤や背骨もゆがみますが、いろいろな筋肉も衰えます。今回は妊娠出産で衰えた機能を回復させて、お腹ポッコリ・腰痛・尿漏れを改善する方法についての説明です。
妊娠中に衰えるインナーユニット
産後の不調を訴えて整体などに行かれる方も多いかと思いますが、産後の機能回復は治療を受けると同時に御自分でもできるエクササイズを行うことも重要です。
では、何をどう鍛えればよいか?・・・ですが、 妊娠出産で衰える筋肉と言えば腹筋を思う浮かべる方は多いのではないでしょうか。
もちろん腹筋も大事なのですが、これ以外にも妊娠出産により衰えたりダメージをうける筋肉群にインナーユニットというのがあります。
体の中には3つの空間がありますが、一つが頭がい骨の中、一つが肺と心臓のある胸腔、そして一番下に消化器や骨盤内臓のある腹腔です。インナーユニットは、この腹腔の周囲を形成している筋肉で、横隔膜、腹横筋、骨盤底筋群からなります(さらに背骨の後方の深いところにある多裂筋を含める場合もあります)。
インナーユニットの3つの筋肉の説明
横隔膜は、胸腔と腹腔の境にある筋肉で腹式呼吸で上下に動きますが、妊娠後期は横隔膜が下に下げにくくなり、胸式呼吸になる傾向があるので衰えやすくなります。胸式呼吸が優位になると交感神経が優位になり末梢の血液循環なども悪くなりがちです。
腹横筋は腹筋群の一つですが、お腹の横の方から引き締めることで腹圧を高める働きがあり、出産時の「いきみ」では重要かつ必要な筋肉ですが、妊娠中にお腹が大きくなるとやはり衰えます。産後に腹筋運動をやってもなかなかお腹ポッコリが良くならない方はこの筋肉の衰えの可能性があります。また、やはり腹式呼吸で動く筋肉なので、この筋肉の動きが悪いと腹腔内の内臓の動きも悪くなり、便秘やその後の生理痛もひどくなる場合もあります。
骨盤底筋群は骨盤の底にある肛門・膣・尿道を覆っている筋肉ですが、妊娠中は大きくなった子宮を下から支え負担を強いられ、出産時はまぎれもなく損傷を受ける筋肉群です。多くの方がこの筋群の衰えによる産後の尿漏れは経験すると思いますし、産院でも骨盤底筋群の回復の為のトレーニングは指導されるのではないでしょうか?(有名なケーグル体操なんていうのもありますね。)
インナーユニットの筋群を同時に鍛えられる簡単エクササイズ・・・ドローイン
立っても座っても寝ててもできるエクササイズですが、仰向けで行う方法で説明します。
①仰向けで寝て膝を立て、お腹に手を置きます。
②大きくお腹を膨らませながら息を吸います。
③そこから、お腹をへこませて息を吐ききるようにします。これは腹式呼吸の強制呼気と言いますが、この時に背中や腰が丸くならないように注意して下さい。お腹と背中が前後にくっつくようなイメージです。この時に肛門周囲~陰部の骨盤底筋群にも力を入れます。
④このお腹がへこみ骨盤底筋群に力を入れた状態を10秒くらいキープしますが、この時はへこんだ状態のまま小さく息をしてください(息を止めないように)。慣れてきたら少しずつ時間を伸ばして30秒ぐらいを目標にしてみてください。
注意としては、出産直後の産褥期は骨盤底筋群も損傷している状態で安静が第一ですので、まだやらないように(産院で教えられる産褥体操はおススメします。)。産後1カ月半~2カ月以降で行ってみて下さい。もし行うことで腰の痛みなどが出る場合はそのまま続けないでどうぞご相談ください。
もう一つの注意として、通常の腹筋運動(仰向けで頭肩を起こしていく腹筋運動)もお腹を引き締めるのに効果はありますがやる時期に注意です・・・妊娠後期から産後しばらくは前面の腹筋である腹直筋が中央の白線というコラーゲン組織が左右に広がることで離開します。これを「腹直筋離開」と言いますが、この状態で腹圧が前方にかかる腹筋をやってしまうと状況をより悪くさせる場合があるので、通常の腹筋は、腹直筋離開が閉じてよくなってからにしてください。
腹直筋離開かどうか調べる方法は、仰向けで膝を立てて寝た状態で、おへそを覗き込むように頭と肩を床から起こします。その時に中央の白線に指二本以上がはいるようであれば腹直筋離開であると判断します(腹直筋離開はお腹の上部→下部の順序で改善してきます。上の方が閉じていても下はまだ開いている場合もあるのでご注意ください)。
ちなみに、上記でご紹介している骨盤底筋群に力を入れたドローインは腹直筋離解を閉じる方向に導きますので、まずはこれからやるようにして下さい。