人間は直立二足歩行への過程で上半身を支える為に骨盤が幅広く進化しその上に背骨が直立で乗っかるという姿勢になりました。
積み木が積まれているように静止していれば安定できますが、さまざまな不安定な姿勢や動きの中でバランスをとる為に上半身の体重を受ける腰回りは大きな負荷がかかります。
したがって人間にとって腰痛とは必然的に起こりやすい問題とも言えます。
人間が直立するにあたり、最も体の負担にならない姿勢というのは、下の絵で示した左の①の姿勢です。腰椎が軽い前カーブ。胸椎は緩やかな後ろへのカーブ。頚椎は根本から緩やか前カーブを描きます。この状態で体は積み木に載るような感じでむだな力を必要とせずに立つことが出来、腰への負担もかからない姿勢です。この背骨のアライメントを「生理的S字の湾曲」と言います。
ところが悪い生活姿勢の習慣により、この「生理的S字の湾曲」が崩れると腰への負担も増して「腰痛」を招いてしまいます。
上記の①に対して②~③は腰への負担が大きい姿勢です。それぞれについて説明すると、
②は典型的な猫背の姿勢ですが、丸い背中に対して腰椎の前へのカーブがきつ過ぎです。この状態だと腰部の筋肉が緊張して短縮し、腰椎の関節にも負担がかかって腰痛の原因となります。
③は逆に背骨が平たん過ぎます。この状態だと腰の筋肉は体が前に崩れないように絶えず緊張をしいられ、椎間板の後方への圧迫も起こりやすくなります。ぎっくり腰なども起こりやすい姿勢です。
④はお腹が前に出た反り腰の猫背姿勢ですが股関節が前方に移動している為、骨盤が後ろに傾いている影響で腰の前カーブは意外と少ない状態で、腰椎下部の局所的な関節のつまりや椎間板の圧迫が起こりやすい姿勢です。
人間の体はある一定姿勢を続けてとっているとその形を覚えていきます。
例えば、デスクワークで一日中座っている人であれば、下の絵の左側の①のように、しっかりと立てた骨盤の上に体が真っすぐ立っていれば、「生理的S字の湾曲」も維持され、腰への負担も軽度ですが、②や③のような腰が丸まり骨盤の歪みや後方への傾きを促す座り方をしていれば、体や腰への負担が増す姿勢を体が覚えていき、その悪い座り方自体も腰回りの筋肉、靭帯、関節、椎間板などへの負担になり、腰椎のすべり・分離・椎間板の問題・神経への狭窄なども招きやすくし、腰痛やぎっくり腰だけでなく、時に坐骨神経や大腿神経などの問題なども引き起こします。
腰に負担を招く姿勢は上記のような椅子の座り方だけではありません。
他にも・・・
・ハイヒールを履いた立ち仕事
・前傾姿勢での作業
・車の運転
・妊娠中や出産後の育児
・家事
・介護
・保育
・荷物の持ち運び
・スポーツや音楽
・椅子が無い床に座る生活
などなど・・・
さまざまな状況が腰に負担となり、それが続くことで腰痛という症状で表れてきます。
腰痛の根本原因の多くは悪い姿勢からくる、体重を支える腰部に対する過度な負担の持続や繰り返しです。
その負担により腰部の筋肉、靭帯、関節、椎間板、そこから出る神経に対する悪い干渉により腰痛は発生します。
したがってより効率的な改善を目指す場合。施術するにあたって注目することは大きく2点あります。一つは腰への負担を減らす為に体全体の姿勢を改善していく方向の動きをつけていくこと。もう一つは、痛い腰部そのもに対して、適切なアプローチをしていくことです。
要するに、腰が痛いといってもいろいろなタイプがあります。例えばその一つに、機能性障害というのがあります。これはわかりやすく言うと、腰を反るのが固い人が腰を反らせると痛みが出るというケースです。この場合は仮に痛みが出るとしても腰を反る方向に動かす方が改善に向かいます。しかし、関節の局所的ストレスで起こる腰痛は、痛みの方向に動かしてしまうと、良い結果は得られません。また椎間板の問題による腰痛では体を動かした方向に対しての痛みの出方の変化や神経機能の変化を見極めて、施術の方向性決めていく必要があります。
要するに大切なのは、カウンセリングと検査でどういうタイプの腰痛なのかを見極めて施術していくことだと考えています。
そのうえで、腰痛の根本原因である生活姿勢についての指導や姿勢維持の為のコツや工夫、またケースによっては改善に向けたエクササイズの指導などをおこなっていくことで根本的な腰痛のの改善を目指します。
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