今の季節は、何かと眠気を催すことが多い時期ですね。冬から春になると暖かくなって副交感神経が優位になることや、日が長くなって睡眠に重要なホルモンであるメラトニンの分泌が減ることで睡眠の質が低下する為に昼間も眠くなると言われます。そんな眠くなる季節の春ですが、来院者さんから、「正しい寝方」はどのような姿勢で寝ればよいの?ということをよく聞かれます。
「正しい寝方」結論から言うと・・・
寝方には「仰向け」「うつ伏せ」「横向き」などがありますが、理想的な寝方というのを結論から言うと適度に「寝返りをうつ」です。
よく朝起きると腰が痛いとか首肩が凝っているという話を聞きますが、昼間はだれでも適度な動きがあるので筋肉は動き血液循環も促されます。
しかし、寝ている間に仰向けでも横向きでもそのままの姿勢でじっと朝まで寝ていれば、筋肉は固まり血液循環も阻害されてしまい発痛物質・疲労物質がたまって痛みや凝りがでてしまいます。
また、寝る姿勢によっては寝返りを打たないことで、椎間板などの変性を促進させたり、姿勢や顎関節のゆがみが起こりやすくなってしまいます。
確かに、朝起きた時に腰痛や肩凝り感を感じるという来院者様におたずねすると「、自分はあまり寝返りをうっていない」という自覚がある方は多いようです。ちなみに理想的には一晩の睡眠中で20回~30回ぐらいの寝返りが理想的と言われています。
睡眠のメカニズムからみる寝返りの重要性「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」
寝返りについてお話しする前に、まず睡眠のメカニズムを少し知る必要があります。睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠というのがあります。
レム睡眠は体の筋肉は休息状態にありますが脳は覚醒しており、交感神経が優位の「浅い眠り」の状態です。夢を見るのはこの眠りの時です。
ノンレム睡眠は脳が休息して、心拍・呼吸数・血圧も低下し、成長ホルモンの分泌が促され、副交感神経が優位の「深い眠り」の状態ですが、体の筋肉は活動できる状態です。
レム睡眠とノンレム睡眠で合わせて90分ぐらいを1周期として、繰り返されます(睡眠時間6時間の人で3~4周期)。
レム睡眠からノンレム睡眠に移行するに従い眠りの深さによって4つのレベル(ステージ)がありますが、通常この睡眠のレベルが切り替わるタイミングに「寝返り」が関係しているということです。ようするに、より深い睡眠を得ることは寝返りを行う為にも重要ということです。
「寝返り」をうつ為には・・・
「寝返り」がうてる睡眠とは、より深いレベルのノンレム睡眠で眠れる環境が重要です。
その為には・・・
・寝具の問題がないかチェック・・・枕が柔らかすぎたり、高すぎ・低すぎだと寝返りが打ちにくくなります。マットレスも柔らかすぎると体が沈んで寝返りがうちにくくなり、固すぎると一点に体重圧がかかり過ぎて血行をそこねるので、適切な柔らかさが必要です。(高額マットレスを売りつけるようなことはしていないのでご安心を)
・寝る前に避けた方が良い物・・・カフェインはもちろんですが、寝酒も早く眠りにつけますが酔いがさめたころに覚醒して深い眠りにつけないのでできるだけ避けましょう。また、寝る前のパソコンやスマホ・ゲームは交感神経が興奮して覚醒してしまうので避けた方が賢明です。
・昼間の過ごし方・・・夜にぐっすり眠るには、ある程度昼間は活動的に過ごすことも必要です。昼間に頭も体も少し今より働かせることを心がけましょう。また家庭の主婦や高齢の方で昼寝が長すぎる方は注意が必要です。リフレッシュの為の昼寝は悪くありませんが1時間以内にしたほうが良いと思います。
・姿勢の問題・・・猫背やストレートネックや反り腰も寝返りをうちにくくさせます。ぜひご相談ください。
注意・・・高齢者の極度の猫背や抱えている疾患(五十肩・ぎっくり腰・心臓循環器の問題など)や状態(妊娠中など)によっては一定の姿勢に片寄るのも仕方ない場合もあります。以下に根本的な寝る姿勢(仰向け・うつ伏せ・横向き)それぞれのメリット・デメリットについてお話します。
さまざまな寝方のメリット・デメリット
・仰向け
カイロプラクティック的には仰向けで寝るというのが理想です。背骨を中心とした正しい体の構造を維持でき、猫背の予防ができるのが仰向けです。血液循環に偏りが起こりにくい寝方でもあります。手足が解放されるので熱がこもりにくく入眠しやすい寝方なので睡眠に入る最初の寝方としておススメです。
デメリットとしてはいびきや睡眠時無呼吸を誘発しやすいこと、仰向けで寝ていて腰が痛む方は、腰の反り過ぎや反対に腰猫背で腰椎の前弯カーブが無い方が、マットレスや枕の問題も含めて、それぞれの悪い状態が強調されてしまっている可能性があります。マットレスの固さで腰椎の弯曲も変わってくるので適正な弾力のマットレスや適正な高さのマクラ、あるいは腰マクラなどが必要な場合もあります。また、仰向け寝で息苦しいとか動悸がするという方の場合は、仰向けより横向きをおススメします。
・横向き
東洋医学では最も体の負担にならない寝方と言われています。いびきや睡眠時無呼吸のある方は気道がふさがりにくい横向きがおススメです。心臓循環器、呼吸器にも負担にならない寝方です。
デメリットとしては、左右の向き方がどちらかに偏る場合が多いため体の歪み(骨盤・背骨。顎関節など)ができやすく、顔のシワなども出来やすい。腰を前に曲げた時や座っている時に腰が痛む腰椎椎間板ヘルニアなどの方は、症状を誘発しやすくさせてしまいます。
・うつ伏せ
90代の現役医師として有名だった聖路加病院の日野原重明先生(故人)が心肺機能に負担をかけない寝方として推奨していたのがうつ伏せです。胸郭の前の動きが制限されますが、結果として横隔膜の動きが導かれて腹式呼吸で多くの空気を肺にとりいれられるので、心臓の負担にもなりにくく、いびきや睡眠時無呼吸にもなりにくい寝方です。背中や腰の筋肉もリラックスしやすい寝方です。
ただし、寝返りがうちにくく、首は真下を向いているわけにはいかないのでかなり首を回旋する必要があります。また体型によっては腰は反り過ぎてしまうので、長時間のうつ伏せは首や腰の関節に負担がかかりやすく、寝違いなども起こりやすくなる為、カイロプラクティック的にはあまりおススメというわけにはいきません。
・その他いろいろ留意点
いろいろな寝方はありますが、理想的にはあくまでも適度に寝返りをうつことです。しかし当院に来られる来院者様には「そうもいかない」という場合もあります。そんな代表的な例として・・・
ぎっくり腰では仰向けで寝ると痛い場合が多いです。比較的楽なのが横向きですが、仰向けで膝を立てた状態を維持できるように膝枕を膝の下に敷くというのも楽に寝れると思います。ただし、膝枕をしていると寝返りがうちにくく、常用していると腰の前カーブがなくなって別の腰の問題を起こすので、腰の状態が良くなったら膝枕は外しましょう。ただし、反り腰の矯正の為に一定期間膝枕を入れて寝ることをおススメする場合はあります。
四十肩・五十肩では夜間に寝ている時に痛みが出てしまうのがしばしば問題になります。この場合は仰向けで痛い方の肩に肩枕(タオルケットなどを直径8~10cmぐらいになるように丸める)を敷くと楽になります。肩から腕全体に敷くことがコツです。
妊娠後期の妊婦さんの場合は仰向けだと動悸・息苦しさ・気持ち悪さを感じる場合があります。これは仰臥位低血圧症候群といって大きくなった子宮がお腹の太い静脈(下大静脈)を圧迫して心臓に戻る血液量が減ることで発症する症状です。妊娠でお腹が大きくなってきたら下大静脈が解放されやすい左下にした横向きをおススメします(むくみの軽減にもなります)。