40歳代以上の中高年におこる「肩の痛み」と「可動制限(肩の関節が動かなくなる)」を主訴とした肩の疾患です。
病名は国内では「肩関節周囲炎」と言いますが、国際的にはfrozen shoulder「凍結肩」といわれます。
はっきりとした原因はわかっていませんが、思い当たるきっかけがなく痛くなるケースと、外傷などを引き金としたケースがあります。肺・心臓・乳がんなどの手術後に発症する場合もあります。猫背で肩こりしやすい方や糖尿病や甲状腺の病気、脂質異常のある方も発症しやすくかつ治りにくい傾向があります。
肩や時に腕にも至る痛みが起こり、発症初期はかなり強い痛みとなることもあり、安静時や夜間の痛みもでます。痛みとともに肩の関節が動かなくなることで、洗髪や髪を櫛で解く動作、服を着る脱ぐ、電車でつり革につかまる、ズボンのお尻のポケットに手を伸ばすなど諸々の生活動作に問題が出てきます。
四十肩・五十肩を強い肩こりと思っている方も多いようですが、首肩の「筋肉」の循環停滞から老廃物が蓄積されておこる肩こりとは、だいぶ違います。症状のでる場所の違いもありますが(図参照)それだけではありません。
四十肩・五十肩は滑液包と呼ばれる関節のうごきを良くする潤滑液を出す袋(肩峰下滑液包)や、関節包と呼ばれる肩の関節を包む膜が経年劣化(ようするに加齢による衰え)によって固くなり関節に癒着することで起こる「拘縮」と言われる痛みをともなう肩の動きの制限が特徴的です。
この「拘縮」が起こると、自力でも他人に動かしてもらおうとしても肩腕は制限された範囲以上は動かなくなります。
進行過程は大きく3期に分かれ、症状も病期によって変わります。
・炎症期・・・発症初期で強い痛みがあらわれます。肩を動かす時はもちろん、ひどいとじっとしていても痛みが出る場合もあります。夜間の痛みにより睡眠が妨げられることもあります。徐々に肩関節の拘縮(肩が動かなくなる)が進行します。
・拘縮期・・・痛みは炎症期に比べると和らいではきますが、肩関節の拘縮が完成し、あらゆる方向の動きが制限され、特に可動域の終端での痛みは残り、生活上の肩の動きに支障をきたします。
・回復期・・・可動域の終端での痛みもだいぶとれてきますが、まだ肩の拘縮はあり、可動制限はある状態です。しかし動きの制限は徐々にとれてきて回復に向かう時期です。
カイロプラクティックといえばまずは、背骨や骨盤に対しての施術を思い描くと思いますが、それは、四十肩・五十肩をはじめとした肩の関節のトラブルにおいても同様です。
やってみましょう!
画像左のように、姿勢を猫背にして腕を横から上に上げてみて下さい。肩は真上に上がらず、無理やり真上に上げようとしても耳につくような位置まではなかなかいかないと思います。
今度は画像右のように背筋を伸ばして同様に腕を横から上に上げてみるとスムーズに上がることを体感できると思います。
これは、背骨が丸まった猫背だと、肩甲骨が前方に転移して、肩の関節の動きに無理をかけてしまうためにおこる動きの違いです。このことは、肩の関節の問題においても背骨への施術や姿勢の改善が重要になることを意味します。
四十肩・五十肩の施術は上記で説明した3つの病期で変わってきます。
・炎症期・・・患部に対しては安静が基本で、症状がひどい場合は関節を動かすような操作はできません。炎症・熱感を抑える為にアイシングを行う場合もあります。患部以外の部分の操作で肩から腕に至る症状の緩和や肩の関節の負担になる体の構造に対してアプローチします。炎症期から拘縮期の移行期では痛みの出ない範囲で可動性をつける操作を行う場合はあります。また夜間痛に対しての寝方の指導なども行います。
・拘縮期・・・肩関節の癒着をリリースし、肩の動きの制限を改善するために直接肩関節の積極的な操作を行います。治療とともに可動域を改善する為のエクササイズの指導を行います。
・回復期・・・さらなる可動域の改善の為に積極的に動かします。エクササイズもより積極的に行ってもらい、より早期の回復を目指します。
炎症期の症状があまりにひどく、じっとしていても痛いぐらいであれば、整形外科で痛み止めによりひどい状態を早く脱して、肩関節に対しての動きの治療をが出来る状態にしてもらった上で当院へ来てたいただいた方が結果的に早い回復につながるので、そのような状態であれば整形外科にいってもらうことをおススメする場合もあります。
これは他の肩関節疾患(肩板断裂や石灰沈着性腱炎など)もひどい急性期には四十肩・五十肩の炎症期とよく似た症状となり鑑別が難しい為、まず整形外科に行かれた方が良いという意味もあります。(慢性期であれば、それぞれの疾患の特徴がはっきりするので、それぞれに合った施術が可能です)
元々改善に時間がかかる疾患です。治療を施さず自然治癒で改善を待とうとすると1年~2年かかるとよく言われます。しかし実際には個人差が大きく1年~4年ぐらいと幅があります。さらに完全に元の可動域には戻っていない状態でもっと長い期間「こんなもんだろう」とほっておいている方も少なくありません。
施術を行いながら改善していった場合は、どの病期で来院していただいたか(炎症期、拘縮期、回復期)で大きく変わります。目標としては炎症期に来られた場合の改善目標は6ヶ月ぐらいですが、指導差し上げたエクササイズを来院者様自身でどれくらい実行できているかによってもだいぶ変わります。
四十肩・五十肩の可動域の改善に時間がかかると、その間に肩関節に無理をかけながら動作をすることになる為、再発や腱断裂などの新たな肩の関節疾患で苦しむことになる場合もあるので、ぜひ、一緒に四十肩・五十肩の改善を目指しましょう。