--症状--
「2週間程前に仕事中に机の下に落ちた物を拾おうとしてぎっくり腰のような感じで腰が痛くなった。」
「発症した翌日に整形外科に行ったが、レントゲンでは骨には異常はなく、痛み止めを処方されたがなかなか治らない。」
「1週間程前から左のお尻から腿の裏~ふくらはぎにかけて痛みが出てきた。脚の方が痛くなるのは今回が初めて。」
「いままでもぎっくり腰は何度かやっており、整体や針なども受けたことはある。その度に2週間程で治っていたが、今回はなかなか良くならない。」
「座っている時や立ち上がる時、電車で立っている時も時間が長いと痛くなる。顔を洗うとか、靴下を履くなど腰を曲げると痛い。」
--検査--
姿勢
一見して腰の前カーブが無いのが目立つ。背中は比較的平らな平背。首の前へのカーブも少ない。
座った姿勢も腰のの丸みが強くなる。
筋の緊張や痛み
首の筋の緊張が強い。腰の張りが強く下部左側に圧痛がある。
可動と痛みや違和感
腰を屈曲(前屈)させると左の腰部から臀部ふくらはぎまでの下肢の痛み、わずかしか屈曲できない。
腰を伸展(後屈)させると下肢の痛みは無いが腰は少し痛み
身体を右に曲げるとやはり左の下肢の痛み、左に曲げた時は大丈夫。
筋力テスト
左足の母趾伸筋と腓骨筋の弱化
神経学テスト
知覚は左足のS1領域の低下と左アキレス腱反射の低下
整形学テスト
左下肢伸展挙上テスト(SLR)・ブラガードテスト・右下肢の挙上テスト(WLR)・バルサルバテストで陽性
カイロプラクティックテスト
頚椎 C1・C2の伸展と左回旋制限
胸椎 T4・T5伸展制限
腰椎 L2・L3・L4伸展制限
骨盤 左後下方内方変位 右前上方外方変位
--分析--
整形外科では異常なしと言われているが、整形外科に行ったタイミングでは下肢の痛みは出ていなかったのでレントゲンの検査のみで異常なしとなったと思われる。
現状は動作による下肢痛の出かたや筋力テストの弱化、知覚や反射痛の低下など神経症状もでており、SLR・ブラガード・WLRテストで陽性で腰の屈曲での下肢の痛みの誘発などを考えると椎間板の問題の可能性が高いように思える。
知覚の異常の領域やアキレス腱反射の低下。腓骨筋の弱化など~考えるとS1の神経根症状の可能性が高い。
動作による痛みの出かたは比較的はっきりしており、左側屈と伸展方向は楽になるので、まずは同方向への反復によるフレクションテーブルを用いたマッケンジー法を神経症状の変化を見ながら施していく。
その上で、胸椎~頚椎は生理的S字の弯曲を促すように動きを調整する。
特にデスクワークなので、できるだけ腰の前弯を維持できるように座り方の指導。回復の具合に合わせてマッケンジー法のエクササイズ指導も行っていく。
週一回ぐらいの通院をすすめる。
--施術と経過--
首と腰部の筋肉の緊張緩和の操作。
さらにブロックを使用した骨盤の調整。
フレクションテーブルを用いて左側屈と伸展方向への反復動作を腓骨筋と母趾伸筋の筋力回復をみながら行う。
胸椎は屈曲の動きを促すように調整。頚椎は上部の伸展と回旋を促すように動きを調整。
さらに正しい座り方の指導。
施術後は、知覚の変化は無く、SLRは痛みが発症する挙上角度が少し増えた程度であるが、弱化筋の回復とともにアキレス腱反射がUP。
来院者の自覚症状は大きく変わっていないが、神経学的な回復の徴候はみえているので、マッケンジー法のエクササイズの指導を行った。
2回目の来院時には症状や検査結果は前回と同じであるが、自覚症状としては少し良くなっているとの話。施術も前回と同様。座り姿勢とエクササイズの確認を行った。
7回目の来院時にはSLRなどの整形外科テストや神経学テスト・筋力テストもほぼ回復、自覚症状的にも痛みはなくなったが、椎間板の問題で起こる神経症状は姿勢や動作で腰に負担をかけると再発する場合もあるので、以降は間隔をあけて定期的なボディメンテナンスの通院をしている。